『シン・ウルトラマン』的視点で
『ウルトラマン』を考えてみる
・
「人類の利己的な行為が他の生命体に影響を与え、報復的な結果で人類が危機に陥る」という話は、
偉大なるTHE ORIGIN『ゴジラ』から続く特撮怪獣モノの伝統であり、『ウルトラマン』で言えば第4話の
ラゴンの時点で既に描かれています。ウルトラシリーズでは、
「血吐マラソン」が有名なギエロン星獣を筆頭に、ウルトラ兄弟総動員のウルトラベルが印象的なムルロアなんかが代表格。
・上記の点を踏まえ、
「ウルトラマンは地球の平和を守る正義のヒーロー」という一般的な概念を、『シン・ウルトラマン』で描かれた価値観や倫理観、加えて
ゾーフィ言うところの「宇宙の秩序」的な視点から考えると、ウルトラマンが怪獣から人類を守る行為を
「正義」と呼ぶのは疑問符が付いてしまうと言えます。
・ベムラーやバルタン星人は
「外生生物による他天体への敵対・侵略行為は宇宙の秩序に反する」とかなんとか言えばOKとしても、3話のネロンガの時点で
「原生生物同士の争い」なワケですし、次の4話のラゴンは上記の通り元をただせば「人類の自業自得」ですから、ゾーフィに
「上位存在が他天体の原生生物同士の争いの一方に加勢するのは宇宙の秩序に反する」と言われると、反論が難しいところ。
・ケロニアなんて
「原生知的生物同士による地球の覇権争い」と考えれば、アメリカと中国が戦争するようなモンだし、もし仮に「片方の奴らが勝つと後々宇宙の秩序を乱す可能性があるから、もう片方に肩入れするのはセーフ」って主張しても、あのゾーフィだと「それじゃ
面倒だからゼットンでどーん(意訳)」ってなりそうだし。
・「平和を守る」って言っても、それは
「人間に都合の良い平和」であって、視点を変えれば
「人間は自分の都合で他の生命体を滅ぼす」とザラブが指摘した通りの話です。だから、人間の都合による環境破壊で住処を荒らされ平和な生活を奪われ
「果てしなき復讐」に駆り立てられたザンボラーを、一方的に悪者扱いするのは
筋が通らないと思う人が居ても当然でしょう。それ以前から、『ゴジラ』公開時のアンケートで
ゴジラに同情的な声が多く寄せられたという話もありますし、ギエロン星獣も然り。
・ウルトラマンの「平和を守る」「正義を守る」という行動について、昔からある
言い訳としては「ウルトラマンはハヤタを殺してしまった
償いとしてハヤタを生命を共有した結果としてハヤタ=人類の平和と正義の為に戦っている」という解釈があります。でもこれ、そもそも苦しい気がする上に、
「宇宙の秩序」的にゾーフィがOKしてくれるとはとても思えません。
・ちなみに『帰ってきたウルトラマン』以降のウルトラ戦士は、基本的に
光の国から指令を受けて地球に来ているので、人類保護=地球産怪獣退治は宇宙警備隊の
ミスターファイヤーヘッド隊長公認のお仕事と考えられますが、これを『シン・ウルトラマン』の世界観で考えると、
「生物兵器に転用可能な資源の確保」という、藤子A先生のブラックユーモア短編の香りが漂う気が。てゆーか、
人間牧場?(能登声で)
・で、あれこれ考えた結果辿り着いた結論は
「細けぇことはいいんだよ」
に尽きます。その理由を次の項目で。
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・余談ですが、これ描いてる途中で「はやぶさ2が持ち帰ったカプセルを分析したら、
地球の生命の源であるアミノ酸は宇宙から飛来した可能性が高くなった」なんて記事がありまして、
「他天体から飛来して棲みついた生物による星の支配者の座を巡る争い」な『エヴァ』を思い出した方が居ましたら、お友達になれそうです。